新井研究室


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横浜国立大学 新井研究室 研究内容

研究内容の概要

今日、我々が手にしているスマートフォンは、日本国民の7割が所有しているといわれ、今後ますます、所有率が増大していく見込みであり、我々の生活に欠かせないものとなっています。 また、国内においては、インターネット空間と現実空間を高度に融合させ、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会、いわゆる Society 5.0の実現が目標となっております。 世界的にも同じような傾向がみられており、この実現のためには、あらゆるモノがインターネットに繋がるIOT(Internet of Things)により、あらゆる電子デバイスがインターネットに繋がっていくと言われています。 我々の研究室では、こういった人や物をつなぐ無線技術の根幹を支えるアンテナ及び電磁波に関連する研究を行っています。 項目は以下のとおりです。

(1) アンテナハードウェアの設計、実験
(2) アンテナに効率よく給電するための回路
(3) アンテナを測定する方法
(4) アンテナを設計するための解析方法
(5) 無線通信システムの設計など

アンテナハードウェアの設計

アンテナは、無線通信において電波を送信するあるいは受信するといった非常に重要な役割を果たしています。 用途に応じて形が違うのもアンテナの特徴のひとつで、たとえば、テレビの受信などに使われる八木・宇田アンテナは、テレビ局の方向によく電波が飛ぶように設計されています。 また、衛星放送などに使われるパラボラアンテナでは、同じ電力でもより、遠くまで電波が飛ぶように設計されています。 新井研では、こういった用途に応じたアンテナの設計と実証に関する研究を行っております。

用途に応じたアンテナはその実現が難しいことが多いです。

携帯電話に搭載されているアンテナを例にしますと、まず、アンテナ意外にも色々なデバイスを搭載しているので、アンテナが置ける体積に制約があります。 一般的にアンテナの大きさは通信距離と比例するので、長い通信距離の確保が課題となります。 また、人の手に近接させて使うため、その影響も考慮する必要があります。 アンテナは動作できる周波数が決まっており、これは用途によって総務省から割り当てられていますが、他の周波数で動作するアンテナ(GPSやBluetoothなど)は、ものによって動作を邪魔することもあるため、その影響も考慮する必要があります。

車の衝突防止レーダには、ミリ波という高い周波数が割り当てられています。 アンテナの大きさは周波数と反比例するため、物理的な大きさは非常に小さくなり、設計における製作精度はミリメートル以下となります。

アンテナの基本的な理論は、1900年頃には確立されていますが、無線通信の用途は、多岐にわたり、今後ますます増えていくため、こういった制約を克服するアイディアを出すことがアンテナハードウェア設計には重要となります。 新井研究室ではこのアンテナのハードウェアの設計をメインに行っております。

Key word:ダイポールアンテナ、パッチアンテナ、ホーンアンテナ、スロットアンテナ。

給電回路の設計

アンテナから電波を飛ばすには当然、電源とアンテナを繋ぐ線路が必要になります。 給電のやり方次第ではアンテナのビームの形をかえたり、向きに依存しないアンテナも作成することができるので、非常に重要です。 たとえ、とても性能の良いアンテナを提案しても給電ができないと実現できなくなってしまいます。 理想的には、損失が少なくアンテナにまったく影響を与えないものですが、これも用途によって様々な需要があるため簡単ではありません。

最も低損失な線路は導波管ですが、固くて曲げたりすることができません。 曲げたりすることのできる同軸ケーブルなどもありますが、損失が大きくなってしまいます。 またアンテナを複数配置したときは、複雑な配線になってしまいます。 複雑な配線を簡単にできるのはプリント基板を用いたマイクロストリップ線路ですが、これはもっとも損失が高くなります。 またこれらの線路は、電流を流すため、金属で構成されてるので形やアンテナとの距離によってはアンテナの放射に影響を与えます。

線路の設計も、アンテナと同様にこういった制約を克服するようなアイデアをだすのが重要となります。 このようにアンテナと不離一体の給電線路の設計に関する研究も行っております。

Key word:導波管、同軸ケーブル、ストリップ線路。

アンテナを測定する方法

設計したアンテナは、ちゃんと目標の性能が出ているかを評価する必要があります。 アンテナの性能の様々なパラメータで評価され、やり方は、ある程度確立されていますが、これも簡単ではありません

例えば、アンテナから出る電波の形は、アンテナにあまり近いと正しく評価することができません。 これはアンテナが大きいほど顕著になり、物によっては100m以上必要なものがあります。 屋外であれば、こういった広いスペースを確保して、測定することは可能ですが、この場合、色んな電波が飛んでいる中での正確な測定が難しくなります。 一方屋内では、こういったスペースの確保は容易ではありません。 また室内で測定する場合は壁からの反射を除去するため、電波吸収体という材料を壁に敷き詰めますが、非常に高価な材料となります。 使用する周波数によっては、アンテナ自体が非常に小さく測定自体が難しくなるなどの制約も出てきます。

こういった限られた条件で、高い精度の結果を出すため、理論的につめていく研究を行っています。

Key word:近傍界-遠方界変換、フェーズリトリーバル法、3アンテナ法、

アンテナを設計するための解析方法

アンテナの設計は昔はマクスウェルの方程式を解いて定式化することが主流でしたが、今ではシュミレータによる解析が主流となっています。 シュミレータは直感的にアンテナを設計できて、理論では再現が難しい給電線路や、周囲の環境を再現した複雑なモデルも解析ができます。 人の手計算では求められないような莫大な量の計算も、瞬時にこなすことができ、その結果から色々な特性がわかるので、この解析方法も非常に重要です。

非常に便利なものですが、当然モデルが複雑になるほど解析が難しくなり、莫大な計算時間がかかります。 たとえば、ループアンテナという丸い形をしたアンテナがあります。 シミュレータでこの形をモデリングすると、数値で丸い形を再現する必要があります。 細かく分割すれば、より正確に近づいていきますが、分割しただけ、計算量が増えるので計算時間がかかります。 また、基本的な式はマクスウェルの方程式によるものですが、解析方法によっては苦手な材料(誘電体)や構造があったりします。

如何に計算の精度を維持しつつ、計算時間の短縮や、複雑なモデルの計算をこなすかを工夫するの研究を行っています。

Key word:有限要素法、FDTD (Finite difference time domain) 法、モーメント法、CM (Characteristic mode)法

無線通信システムの設計など

アンテナから放射した電波は受信されるまで色々な経路を通ります。 たとえば携帯電話を例にしますと、地上で使う場合はビルに反射したり、地面に反射したりします。 また、雨や霧、湿度が高い日などさまざまな気象の影響もあります。 一方で地下で使う場合には、地上に比べて非常に狭く、人で混雑した環境で使うことになります。 このようにさまざまな経路を通って受信アンテナに到達した電波は、特性が変わることがあります。 こういった特性の変化を事前にデータを集めて解析し、この変化にも影響しないように無線通信のシステムを設計することが、安定した無線通信を維持するために重要です。 本研究室では、このような無線通信システムの設計に関する研究を行っております。

また、伝送速度を安定させるには、送信側からとんだ電波がある程度の電力が受信側に届いている必要があります。 この電波の送信や受信の仕方によっては、伝送容量を倍以上にすることもでき、複数のアンテナを使って伝送容量を増やすMIMO (Multi Input Multi Output)という技術もあります。 このような伝送速度の速い無線通信のシステムを設計し、評価する研究も行っております。

Key word:レイトレース法、MIMO、Massive MIMO





 

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